「銅版に刻まれた生 伝説の版画家・菊池伶司」

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日本の版画が国際的に注目を集め、最も熱かった1960年代。一陣の風の様に颯爽と現れ、消えていった伝説的な版画家が菊池伶司(1946~68)である。1967年、菊池は21歳で銅版画を学び始め、わずか一年後に日本版画協会新人賞、シェル美術賞などを立て続けに受賞する。解剖図や標本を思わせる不思議なフォルム。画面を縦横無尽に走る判読不能な文字。高度なエッチング技術を駆使した、それまでにない精緻で詩的な版画は、一躍、驚異の新人として注目を集め、多くの公募展で菊池の亜流のような作品が壁を飾るほどであった。しかし、1968年、生まれつき腎臓に疾患のあった菊池は、病のため22歳の若さで亡くなり、異才を放つその作品と夭折によって伝説的な存在となる。 菊池は、まさに銅版の上に生を見いだし、死を覚悟しながらも絵日記のように自らの生の記録を刻み続け、わずか一年半の間に、研ぎすまされた約60点もの作品を残したのだ。知られざる版画家・菊池伶司の世界を、芥川賞作家で新進気鋭のフランス文学者・堀江敏幸さんと探ってゆく。

堀江敏幸さん(作家・フランス文学者)

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